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黄昏の中で愛を願う




夕刻。

朱色の光が窓から差し込み、部屋全体が暖かな色で染まる。

白い書類の上のその赤い髪も、温かな朱色に包まれていた。

机の上に突っ伏しているその人物に、極卒はため息をこぼす。



―――こんなになるまで、仕事をするなんて。



しかし、それも仕方の無い事だ、と書類を見れば思う。

一人分の仕事にしては、その量は半端ない。睡眠時間を削ってでも、間に合うかどうか。

このまま、そっと寝かせてあげたいのが、極卒の本音だ。

だが、そのせいで仕事が遅れてしまっては、今以上に彼は忙しくなってしまう。

そうなれば、余計に睡眠時間は削られ……いつかは過労で倒れてしまうだろう。

そう思うと怖かった。

仕事を手伝ってあげられたならば、一番良かった。だが、極卒は暗殺組織の敵だ。本来ならば、ここに居る事でさえ、許されない。

それでも、逢いたかった。その声を聞きたくて、彼に触れたくて。



「ヴィルヘルム」



名を呼び、肩を揺さぶる。

起きてください、と声を掛ければ、彼はか細い声で呻く。

はじめは気だるそうにしていた彼も、仕事の間に眠ってしまった失態を、覚醒と共に思い出したようだ。



「……私は、」

「仕事の途中でしたでしょう?本当はゆっくり寝かせてあげたかったのですが」



極卒がそう言うと、彼は極卒の存在を認識し、そして驚いた様子で極卒を見上げる。



「……極卒、何故お前が」

「貴方に逢いに。ですが、お忙しいようですね。僕は失礼いたしましょうか」

「いや、私が眠らないように見張れ」

「素直にそばにいて欲しい、と言えないのですか」



極卒がため息まじりに言えばヴィルヘルムはそれを無視し、仕事の続きを開始した。

彼は、倒れそうになる頭を頬杖で何とか支え、ペンを動かすが、それは時々動きを止めてしまう。

気になり、顔を覗き込めば、まぶたが閉じてしまっていた。

名を呼び、彼の意識を覚醒へと導けば、ヴィルヘルムはまたペンを動かし始める。

だが、すぐに、彼は眠りへと落ちていってしまうのだった。

それ程、睡眠が足りないという事を極卒は知る。しかしこれでは、仕事は進むはずもない。

目を閉じたままの彼を椅子にもたれさせると、疲れきった寝顔に、その無防備な唇に、口付けを落とす。

初めは、優しく、触れるように。だが角度を変えて何度も口付ければ、それは段々と貪るようなキスに変わっていく。



「んっ……」



唇の違和感に気付いた彼は、無理矢理に自分を目覚めさせたようだ。

抗議を訴える手が、極卒を叩く。

だがそんな弱々しい手などに構わず、極卒はさらに深く口付けを味わう。

口腔を舐め、唇を吸い上げ、わざと淫らな水音を響かせ、愛撫を続けた。



「はぁ……んっ……」



苦しそうに呻いていた声は、今や甘い嬌声へと変わっていた。

一方的に舌を絡めていたのが、今は彼からも求めてくる。

極卒の背に回された手が、ぎゅ、と握ってくれるのが嬉しくて。

つい虐めたくなってしまうのはいけないだろうか。

口唇を契ったまま、極卒は彼の下肢へと手を伸ばし、それに触れ、それを握る。

すると彼はその行為に驚いて身体をびくんとしならせ、吐息の合間に声を漏らすのだった。



「あっ……んぅ……!」



それは彼にとって予想外だったらしく、力の入らない腕で、極卒を引き離そうとする。

仕方なく唇を離してやる。だが下肢に這わせた指は、彼の熱を煽(あお)り続けた。



「あっ……やめ、ないかっ、極卒!」

「何故です。気持ちよかったでしょう?」

「まだ……仕事が、残って……あっ!」



素直じゃない彼を、さらに虐めたくなる。

まだ弱く抵抗を続ける彼の分身の先端を、指で集中的に弄(いじ)る。



「さっきは僕を受け入れてくれたのに?」

「これ以上は……やっ、あぁ……!」



先の接吻は、彼の息抜き程度の戯れだったらしい。

確かに、これ以上彼で遊んでしまうと、彼の仕事は終わりを見せない。

だけど。可愛い反応を見せる彼に、極卒を止めることができるだろうか。



「ここでやめちゃうと辛いでしょう?」



そこまで追いやったのは自分なのだが。

彼が、いけないのだ。本気で抵抗する気があるのなら、さっさと魔術を放てばいいのに。

それができないのを分かりながら、極卒は彼を離さなかった。

ずるい、と自分でも思う。



「ヴィルは、どうして欲しいですか?」



わざとらしく、聞く。彼に快感を与え続けたまま。

答えは分かっていた。だけど、彼の口から聞かないと、気がすまなかった。



「……して……」

「何を?」

「く、口で……」

「口でどうするのです?」



そこまで言葉を紡ぐのは、彼にとって相当の羞恥であっただろう。

顔が真っ赤になり、恥ずかしさのあまり目をそらしながら言う姿が、愛しい。



「……口で、して欲しい……っ」

「いかせて欲しい?」



彼が恥じながら隠した言葉を、露骨に言ってやると、彼はもう言葉を紡ぐのもままならず、ただ頷いた。



必死に目をそらす彼をよそに、極卒は熱くなった下肢を隠す衣服を脱がしていく。

赤く熟れたそれがあらわになると、極卒は、恥ずかしげに、だけど抵抗できずにいる彼の左手に自分の手を絡めた。

そして空いていた片手をすっかり硬くなった彼のそれに添えて、愛撫を与え始める。



「あ……はぁっ……!」

「可愛いですよ、ヴィル…」

「っ、やっ……ああ!」



彼が快感を得る度に、繋いだ手に力がこもる。

感じてくれているのが嬉しくて、極卒はさらに舌を這わせ、くちゅ、と淫らに音を立てながら、唇でも吸い上げて。

すると、彼の先端からは先走りの蜜がとろとろと零れてくる。

甘く、だがほろ苦いそれを、一つも逃さないように舐めれば、彼の嬌声が上がる。



「ふふ……もう我慢できないみたいですね、蜜がこぼれてきましたよ?」

「あっ……言う、なっ……!あぁっ……!」



その言葉にも、彼は感じてしまったらしく。

彼の右手が、極卒の頭を撫でる。……だがそれは極卒から与えられる快楽によって、撫でるというよりは掴むといった感じだったが。

それでも、彼の気持ちがそれに現れているようで、胸に愛しさが広がる。



「はあっ……ああっ…ん……!」



極卒が先端だけを集中的に愛撫すれば、その嬌声もさらに高く。

時には口腔の奥まで頬張り、唇で締め付けるように、そしてそのまま先端まで引き抜くと、彼が震えるのがわかる。



「はぁっ……あっ!あっああぁっ!」



どくんどくんと口の中に放出される精液を飲み込めば、それは粘り気を伴いながら喉を落ちていく。

飛び散ってしまった白い蜜を、汚れを取るように舐めとる。

ふと、握る手に力が無くなったのを感じ、彼を見上げれば。

達した瞬間に、意識を手放してしまったのだろう。

最初の疲れた表情ではなく、安らかな寝顔がそこにあった。



「……仕方のない人ですね」



苦笑しながら、彼の衣服を整えると、壊れ物を扱うように優しく抱き上げた。

そのまま、彼の寝台へと運ぶ。

硬い椅子とは違い、柔らかさに包まれる寝台へと彼を寝かせ、苦しくないように胸元を緩めてあげる。

ふわり、と羽根のような掛け布を被せてやると、彼の口からは甘く優しく、声が漏れた。



「……ごく……そ……」



夢の中で、自分に逢っているのだろうか。

夢の中でも、自分を想っているのだろうか。

そう思うと、愛しくてたまらない。



「ヴィルヘルム」



名を呼び、静かに呟く。



「ずっと貴方を愛していますからね」



だから貴方も、ずっと僕を愛してください。



黄昏の中で、彼は愛を願う。

それは祈りにも似た、儚い願いだった。



おやすみ、と夕暮れに染まる彼の寝顔に口付けを落とす。

すると、彼は一段と幸せそうな顔をして安らかな呼吸を始めるのだった。









「さて、と」



この書類の山を、一体どうしたものかと極卒は思う。

仕事を片付けるはずの彼は寝てしまったし……いや、寝かせてしまったのだが。

そうなってしまえば、やはり代わりの人間が仕事をするしかない。



「仕方ありませんね」



彼の幸せそうな寝顔の代償に、極卒は彼の仕事に手をつけはじめた。

敵が、敵の仕事を手伝うなんて、何ともおかしいものだ、と自分でも思ってしまう。

このことが兄にばれたら……と考えると末恐ろしいが。今は考えないでおこう。



愛しい彼の為ならば、と。



美しかった夕日は既に地平線へ沈んでしまったようだ。

本来ならば、夜が訪れる前に帰る予定だったのに。

それでも、彼の安らかな寝顔を脳裏に思い描けば、国を裏切るのも悪くないと思った。












―――――


あとがき


携帯サイトにて、綾蕪遥様に捧げました。

ヴィルをひたすら可愛くなるように頑張りまし、た…!
結構好評のようで嬉しいです^^

そして、裏切りはイカンよ極卒君。
でも裏切って欲しいなーとも思ってたり。






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