※注意
裏です。死ネタです。
苦手な方は閲覧をご遠慮ください。
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遠くない終末の時
静かに流れ行く時間が心地よかった。
二人を照らす夕日は、やがて地平線に消えようとしている。
―――いつまでも、こうしていられたらいいのに。
日付が変われば、もう二度と、この関係に戻れる事はない。
明日は、彼の所属する暗殺組織と、その彼のとなりで手を握る極卒の所属する帝国軍との全面衝突の日だった。
明日、どちらかが死ぬかもしれない。そんな戦が、目の前に迫っていた。
・・・・・・先程から二人とも、一言も言葉を発することはなかった。
ただ、時間と、空間と、愛しい人に身をゆだねていた。
ついに夕日は、地上から姿を消してしまった。
その名残(なごり)を残す、空のグラデーションを眺めながら、極卒が口を開いた。
「夕日、綺麗でしたね・・・・・・」
「ああ」
西の空には、夜の闇に溶けるように、かすかに朱の色が残っている。
しかしだんだんと、絵の具に溶けるようにその色は消えていき、ついに空には星が瞬くだけとなった。
「ヴィルヘルム」
朱の色が消えたのを見送った時、極卒はその名を呼ぶ。
名を呼ばれた彼が振り返ると、そこに極卒の顔があった。
そして、そのまま、唇が重なる。
最初は優しく触れるだけのキスだったが、それはだんだん貪るような荒々しいキスに変わってく。
最後に、ちゅ、と音を残して唇が離れると、すっかり頬を赤くしてしまったヴィルヘルムを見て、極卒は優しく、愛おしげに笑顔をこぼした。
「ねぇ、最後なのですから、良いでしょう?」
「……ここでか?」
「大丈夫……暗いし誰も来やしません」
そういうと極卒は、今度は奪うように口付けてきた。その拍子にヴィルヘルムは星空を見上げる
ように、草原の上に押し倒される。
何度も角度を変えて唇を吸われ、くちゅ、と響く水音が耳に届くと、心臓がとくんと脈打つ。恥ずかしさに顔は極度に火照り、風邪を引いているのかと錯覚しそうな程だった。
しかしそれでも唇は離れようとはしない。それどころか、先程より激しさを増すばかりだ。
やがて、息苦しくなり、耐え切れず口をわずかに開くと、それを待っていたかのように極卒の舌が入り込んだ。
「……んっ、は……」
巧みに絡め取られる舌の動きに、体の奥からどんどん熱が生まれ始める。
呼吸をしようと口を開いたはずなのに、そこからはただ甘い声が漏れていってしまう。
そんな口付けの合間に、極卒の片手は慣れた手つきでヴィルヘルムの衣服のボタンを外していた。
あらわになった熱を持つ白い肌に、さらされる空気が冷たく感じられる。
そっ、と極卒の片手がその肌に触れる。触れただけなのに、身体の奥がじん、と熱を増した。
「あっ……」
唇がわずかに離れる瞬間に零れる吐息の甘ったるい響きが、自分の声とは信じがたい。
その声を聞かれているのも、恥ずかしくて。
永い接吻は、静かに離れていった。
羞恥のあまり、まともに極卒の顔が見れないというのに、その彼ときたら満足そうに微笑んでいる。
「可愛いですよ……僕のヴィルヘルム」
恥ずかしいはずのその言葉にも、何故だか心臓が脈打った。
極卒はヴィルヘルムのズボンのベルトを解くと、下着ごと一気に膝下まで下げ、あらわになった
熱を持った陰茎を愛おしそうに舐め上げた。生暖かい舌の感触に、体の奥が疼き始める。
「っ!やめっ……!あっ……!」
「やめる?もっと、の間違いでしょう」
意地悪く極卒は言うと、口唇でそれに触れてくる。
わざと水音を立てて、極卒はそれに愛撫する。執拗に舌を這わせ、ヴィルヘルムの体の奥にふつふつとわき上がる欲望をさらに駆り立てる。
「い、やぁっ……!ああっ……ぁ……っ!」
極卒から与えられる甘い刺激が、全身を駆け抜けていった。下腹部が、刺激を与えられるたびにひくひくとうごめく。高ぶる快感が、限界に近づいていた。
それでも極卒は容赦しない。ついに放出された白い雫が顔を汚しても、唇を離そうとはしなかった。それどころか、放出する亀頭に歯を立て、最後の一滴まで絞りつくすほど強く扱われた。
「甘いですね。貴方の蜜は……」
その恥ずかしい言葉に、達したばかりだというのに、頭が痺れそうな程、熱は増す。
自身の液体で汚れた彼の顔が、ヴィルヘルムを見てくすりと笑う。
彼の意地悪そうな笑顔に、心臓の脈打つ音が早さを増す。
(欲しい…)
と目顔でねだった。
極卒は、喜びに顔をほころばせると、熱くたぎったモノを秘部にあてがった。そして、一気に貫く。
「……いっ、……あっ、ああぁっ!」
あまりの衝撃に、快感で背をしならせる。その衝撃に耐え切れそうにも無く、腕を極卒の背に回し、衣服を強く握り締める。
極卒は、そんなヴィルヘルムの反応を楽しむかのように、自らの腰を円を描くようにかきまわす。
その動きに合わせ、さらに快感を求める体は腰を動かし始めた。
「あっ、はぁっ……極、卒っ……!」
痺れるような快感の中、愛しい名を呼ぶ。体の奥に在る熱が、既に全身を侵食し、疼きが頂点に達しそうだった。
「あいしてる……っ!」
喘ぐ吐息の中で、その言葉を紡いだ。
「っ、僕も愛しています……」
達する直前に、彼らはキスを交わした。言葉にならない嬌声を押し殺して、甘く、熱いキスを。
***
戦況は思わしくない。
数だけは立派な帝国軍は、少数精鋭である自軍を徐々に押し始めている。
いくら魔術を放とうと、いくら敵を殺そうと、戦況は変わらなかった。
多人数に囲まれているジャックは、先程から救援を求めているが、敵が多すぎて近づけそうにも無い。距離的には近いはずなのに、届かないもどかしさに、苛立ちも募る。
限界が近づいてくるのを、確かに感じていた。
その時、味方の一人が倒れた。その瞬間に一気になだれ込む敵に、さらに押される。
「くそっ、ヴィル、何とかならねえのかよ!」
怪我を負いながら闘うジャックにはこの状況は酷だ。退くにも四方が囲まれている。
このままでは……先は見えていた。
「ジャック!少しの間持ちこたえていろ!」
「なっ……!何をする気だよ、ヴィル!」
足元に風の魔術を発動させ、その身は敵の頭上を軽々と飛び越える。
敵の海に落ちる事なきよう、木々に助けを借りながら、敵の総司令官である彼の元へ。
……見慣れた黒い軍服が目に入る。
彼もまた、こちらに気付いたようだった。鞘からサーベルを抜く姿が目に映る。
「……極卒!」
最後にその名を叫ぶ。右手に最大限の魔力を集め、空中で体勢を変えた。
彼との距離が近づく瞬間、魔術を放った。
それは、常人ならば、一撃で葬り去る事ができる魔術だった。
自分が迷ってしまわないように、後悔してしまわないように。
だから、この魔術に決めたのに。
体の半分が焼け爛(ただ)れていても、彼はかろうじて生を留めていた。
呼吸さえもままならぬはずなのに、彼は笑ってみせる。
その笑顔を見た途端、ヴィルヘルムの体もその場に崩れる。
咳き込めば、地に広がる赤い液体。そして、自分の腹部に見慣れたサーベルが貫通しているのを確認した。
脳が、眠りを求めていた。闇が、体を侵食し始める。
その感覚が、全身に回ってしまう前に、彼に手を伸ばす。
届かなかった。だけど、十分だった。
彼の、最期の、声にならない言葉が、確かにヴィルヘルムには届いた。
その言葉を聴いた瞬間に、涙が溢れて止まらなかった。
静かに目を閉じた彼に、ヴィルヘルムも最期の言葉を投げかける。
「愛している……私の愛しい人」
―――――
あとがき
え、えろいかがでしたか…?(超自身無)
タイトルがああなので、どうしてもシリアスにしかならないなー、と
書く前から思ってましたが、まさか死ネタになるとは……。
ヴィルだけ生きてる、みたいに書きたかったのですが、
それだと哀しすぎるので。続き考えちゃうので。
でもそんな極ヴィルもすき><
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