たゆたうしゃぼん




しゃぼん玉が飛んでいた。



それは庭園に降り注ぎ、庭園の一角に設けられたテラスまで届いていた。

しゃぼん玉は太陽の日差しを受け、無数の光を反射する。

そのきらめく姿に、テラスで紅茶を飲んでいたヴィルヘルムは何事かと上空を見やる。

屋敷の窓や、屋根の上には誰もいない。だが、屋根の向こうから、しゃぼん玉はやってくるようだった。

一時紅茶を中断し、ヴィルヘルムは飛行の魔術を唱える。

軽く屋根まで飛ぶと、静かに着地し、しゃぼん玉の来る道をたどった。



「・・・・・・そこで何をしている」



虚ろにしゃぼん玉を製造し続けている黒髪の人物にヴィルヘルムは問う。



「しゃぼん玉です。見てわかりませんか。」



黒髪の人物はなおもしゃぼん玉を吹き続ける。



「・・・・・・そういう事ではなくてだな、」

「じゃあ何です。」

「何故お前がここにいる、極卒。」

「僕がここにいてはいけませんか。」



極卒と呼ばれた彼は、しゃぼん玉を吹くのをやめなかった。

しゃぼん玉はヴィルヘルムの横を静かに流れ、通り過ぎていった。



「お前は組織の敵だ。」

「そうです。」

「じゃあ何故」

「あなたの顔を見たかった、では駄目ですか。」

「何を言う」

「じゃあ、あなたに会いたかった、では駄目ですか。」



そこでヴィルヘルムは言葉を詰まらせた。

相変わらず極卒はヴィルヘルムに背を向けながらしゃぼん玉を吹く。



「敵であることはわかってます。でも愛しい人に逢う事くらい、いいでしょう?」

「・・・・・・私たちは許された仲ではない」

「でも僕はあなたを愛している。」



極卒のしゃぼん玉を吹く手が止まった。

黒い髪と黒い軍服が風に揺らめく。その軍服は敵国の物。



「僕は、もう、帰らなければ。」

「待て、極卒!」

「次は、戦場で会いましょう。」



そして、彼はそのまま屋根から飛び降りた。

彼の残したしゃぼん玉が一つ、ヴィルヘルムの元まで漂ってきた。

ヴィルヘルムはそれに触れようとしたが、指先に触れる前に壊れて消えてしまった。



そこには、何も無くなった。



「極卒・・・・・・。」




私は、わからない。

あなたを愛していいのか。

あなたを苦しめてしまわないか。



目を閉じ、先ほどまでそこにあった風景を思い浮かべる。




たゆたうしゃぼんと、彼の姿を。











―――――


あとがき


初めて極ヴィル書きました;
なんかもっとこう、もっとなんか欲しいです。(何)
たゆたうしゃぼんってこれでいいんですかね?←
公式と大幅にイメージが違うのも勿論の事、
しかし皆様の想っている極ヴィル像ともすれ違っていそうです;
極卒君もヴィルも可愛くなくてすみません><







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