荒野に咲く白い花を
何もかも消えてしまった荒野の中で、ぽつんと咲いている花を見つけた。
小さく白い花だった。
枯れた大地の裂け目から咲く花は、気高くて美しく見えた。
ふと、愛しい人の顔が頭をよぎる。
―――そうだ、摘んで彼に見せてあげようか。
手を伸ばし、花に触れるが、その途端、罪悪感を感じてしまった。
摘んではいけない。
そう告げる声がして。
「……君は生きてくださいね……何にもないこの土地を花園にしてしまうまで……」
花園になったら、彼とここを訪れよう。
白い花に囲まれた彼の赤い髪が美しく映える様を思い浮かべ、極卒は笑みをこぼす。
赤い大地に白い花。
それをよく目に焼き付けたのち、極卒は彼に会うために帰路を辿った…
*
「……それで私にこの花を?」
それは荒野に咲く花と比べるとあまりにも大きな花だったが。
「あなたに何もあげる物が無いな、と考えると少し哀しくて。」
長い間、会えなかったのだ。久方ぶりに会うのに捧げる物が無いなど、良心が痛む。
……きっと、戦争の土産話など、あなたは喜ばないだろうから。
「……こんな物無くとも……お前が帰って来ただけで十分なのに……」
ぽつりと彼がこぼした言葉が、少し信じられなくて、わざと極卒は聞き返す。
「え?今……、」
「な、何でもない!忘れろ!」
「照れないでくださいよ」
「照れてない!」
そうは言いつつも彼は、顔を赤らめて下をうつむく。
その姿があまりにも愛しくて。
「ヴィル」
「……何だ」
彼の体を引き寄せて、その白い肌に手を添え、柔らかい唇に口付けを落とす。
最初は驚きから身をこわばらせていた彼も、目を閉じてそれを受け入れていた。
ゆっくりと唇が離れると、そこに赤い瞳が映った。
しかしその瞳には哀しみが宿っていて。
「……また戦争に行くのか」
「すぐに終わりますよ」
「死ぬな」
「あなたの為なら意地でも生きてやりますよ」
……あなたの為に、死ぬわけにはいかない。
彼の手にある白い花を見て、極卒は思う。
「……そうだ、次僕が帰ってきたら、一緒にその花を見に行きましょうね」
次の戦争が終わるまでには、荒野は花園にもなっているだろう。
……それだけ長い間、また離れてしまうが。
彼と荒野に咲く白い花を見るまで、生きてみせると極卒は誓った。
―――――
あとがき
うおおお恥ずかしいいいいい(←
小説って、書いてるときはノリノリなんですが、
書き終わった後が大変です。
うん、甘い感じの極ヴィルが書きたかっただけです!
07/09/09
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