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unter vier Augen




日差しの暖かな午後。

彼はいつものように、庭園の一角に設けられたテラスで、紅茶の用意をしていた。

日が傾く前の昼下がり、温かな日差しに包まれて、花達を眺めながら飲む紅茶が美味しくて、晴れた日はこうして紅茶を楽しむのが彼の日課だった。

テーブルの上に広げられたティーセットと茶菓子を並べ、暖かい紅茶をティーカップに注ぐと、甘い香りが広がる。

その香りと花の香りが爽やかに風に流れ、心地よい空間を作っていた。



「ああ、やはりここにいましたね、ヴィルヘルム」



その声に驚いてヴィルヘルムはあやうく紅茶をこぼしかけた。

動揺が伝わらないようにティーポットをテーブルに置き、そして極卒に問う。



「な、何をしに来たんだ極卒」

「何をしに、と問われましても、紅茶をいただきに、に決まっているでしょう。……それに、ちゃんと僕の分も用意してくれているじゃないですか」



極卒に言われて初めて、ヴィルヘルムは自分がティーカップを二つ用意していることに気がついた。

今日は一人で静かに紅茶を楽しむつもりで、誰とも紅茶を飲む約束をしていないのに。何故無意識に二つ用意しているのだろう。



「違う!これは……」

「ジャックの分、ですか?でも彼は今任務でいないでしょう?」

「だが、お前の為に用意したのでは……!」

「じゃあ誰が飲むのです?」

「そ、それは……っ」



答えきれずにいると、極卒は遠慮も無くヴィルヘルムと対になるように椅子に腰掛け、ティーカップを手にした。



「いただきます」



極卒はヴィルヘルムに少し微笑みかけてから紅茶を口にする。

ヴィルヘルムはその様子をただ見つめるしかできなかった。



「……さすが、貴方の入れた紅茶はおいしいですね」

「……無論だ」



極卒の言葉を聞き、紅茶の味や入れ方に自信が無い訳ではなかったのだが、ヴィルヘルムは何故だか安心してしまった。

そして自身も椅子に腰掛けて、まだ湯気が立っている紅茶を味わう。

暖かい紅茶が喉を落ちていくのが心地良い。

柔らかい日差しのおかげもあって、身体が温まっていくのを感じる。

ふと極卒に目をやると、丁度茶菓子を口にしているところだった。

その遠慮の無さに半ば呆れつつも、仕方ないと諦めてしまう自分がいる。

だけど、紅茶を本当に美味しそうに飲む姿を見ると、何故だか嬉しくなってしまった。

そう思う自分が恥ずかしくなって、目線をそらし、花を眺める。

心臓の鼓動も少し早くなっている。表情が顔に出てしまわないように、花を観察するように眺める事で、気を紛らわそうとした。



「ヴィルヘルム」



不意に名を呼ばれてヴィルヘルムは驚いてしまった。



「明日も紅茶をいただきに来てよろしいですか?」

「……勝手にしろ」



本当は一人で飲むはずだった紅茶。だけど、好意を持つ相手に美味しそうに飲んでもらえる事がこんなにも嬉しく思えるなんて。

明日だけじゃなく、明後日も明々後日も来て欲しかった。そう思うも、口にするのは恥ずかしい。

だから、明日からずっと、二つのカップを用意しよう、と思った。



彼と飲む紅茶が日課になればいい、と願いながら。
















―――――


あとがき


携帯サイトにて、鏡月杏奈様へ捧げました。
unter vier Augenとは、ドイツ語で「二人だけで」という意味だと思います、自信はない!←

甘すぎず、ほのぼのに仕上がってよかったです^^


07/11/25






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